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2014年3月24日 (月)

「かにみそ」

カニはもっぱら身をほじるのが好きなたちで。
脚の爪の先っちょの肉がぽろっと出せたりすると
そりゃもうスカッとします。

閑話休題

「かにみそ」は早朝の海岸でひたすらに砂を
食べるちいさな蟹を拾ったとこからはじまります。
なんとはなしに連れ帰った蟹は、大きくなったり
縮んだり、あげくに喋ったりと(しかもやたら軽い)
かなり妙な奴で。
くわえてそれをすんなり受け入れる主人公も妙。

「体が必要としているものって、甘く感じるものなんだよ」

蟹の話すことばはたくさんあれど、これは特に
印象深かった。

海岸の砂からはじまって魚肉ソーセージに鶏肉、
魚にはては人肉まで。恐ろしいことのはずなのに
どこか滑稽なのは、蟹のあっけらかんとした態度
なのか、喰われるものの血が流れないからなのか。

「生きるために食べる」という蟹の行動原理に
比してみれば、やれ嗜好品だ、美食だと「食」に
こだわる人間は「面倒くさい」生き物なんだろうな、と。
もちろん、私もふくめて。

「かにみそ」につづく「百合の火葬」でも苦悩し
懊悩し、疑惑に駆られて行動するのはいつも人間。
蟹にしろ百合にしろ、どこまでもまっすぐな生き方に
あこがれはあるものの、あがいても届かない己を
鑑みてなぜか凹む、そんな作品でした。

そして、考えさせられる内容から一転、軽妙な
「受賞の言葉」に記された妄想に不覚にも笑った。
こういうのもギャップ萌えというのだろうか。

「かにみそ」倉狩聡、角川書店

2014年3月12日 (水)

「ただし少女はレベル99」

<TANATOS>シリーズでない話は久々だなあと
思っていたらなんのこたない、カサンドラこと
出屋敷先生が霊能力少女の父親として出てて
驚いたのなんの。たしかに娘さんがいるって
くだりはあったけどさ…。
その「娘」がよもや超がつくほど強い神通力の
持ち主で、学校で「カッパーフィールド」なんて
呼ばれてようとは…思いもよらんて。

「幸福には限度額がある」
芹香嬢のケータイで撮った写真の端にカッパー
もとい市子が写っただけでラッキー舞い込む日々。
その揺り戻しと史郎坊や市子の護法たちとの
確執込みで動きまくるジェットコースター展開。

「言葉はいつか自分に返ってくる」
芹香嬢とのつきあいが始まっても、ふつうの
学校生活にはまだまだ遠く。
市子が結構な武力解決派ということが判明。
ノリノリでお祓いしたかと思いきや、年相応な
部分とのギャップがはなはだしい。
あと正論説いたのに史郎坊ものっそい災難w

「人生に無駄な伏線はない」
カサンドラ=出屋敷大雅の衝撃。あと湊さん
なにやってんスか。
で、知らないあいだに妖怪連中と仲良くなってる
芹香嬢。**されそうになった彼女を助けた
史郎坊の「儂らの力がなければ…」につづく
彼の台詞はけっこうクる。

「私の幸せは貴方のそれではない」
3話のノリで市子の学校生活がハートフルに
進行するかと思いきや、まさかの超展開。
さすがこるものクオリティ(勿論褒め言葉)。
いろんな意味で容赦ないですね。
あの終わらせ方に賛否はあろうけれど、この
読了感は嫌いじゃない。
あと史郎坊の「セカイ系など大嫌いじゃ!」には
思わずうなづいてしまった。

ちなみに、↑の感想でおわかりのとおり
個人的イチオシは天狗の史郎坊です。
くたびれた風体で、護法の中じゃ力が弱くて、
ネット関係妙に強くて、基本状況の説明係に
なってるけど、たまにマトモなこと言うから困る。
芹香嬢助ける率高いし。元人間だったことも
あってか、なんだかんだで人よりの思考だし。
出屋敷ファミリー(護法たち含む)の中では
一番人間らしいんじゃなかろうか。
…え、カサンドラ?
彼は思考も含めて一般人とは呼べないので。

あと、カバー絵の影響もあってか史郎坊と
「化物語」の忍野メメが妙にかぶるのだけれど、
気のせいか? 気のせいか。

「ただし少女はレベル99」汀こるもの、講談社ノベルズ

2014年3月 5日 (水)

「オニマル 異界犯罪捜査班 結界の密室」

鬼&陰陽師の凸凹コンビ第二弾にして、早くも鬼丸さんが
ベニやん(注:個人的につけたあだ名。本名ベニー芳垣)に
ほだされまくってる巻でした。

「正体を暴いちゃる」と息巻くベニやんと、猛アタックに
うんざりしながらも仕方なし(でも嬉しそう)に付き合う
鬼丸さん。
…このふたり、まだ同性だから「相棒」感が強いけど、
これ男女だったら恋だか愛だかそういうのに展開しても
おかしくないと、思ったり。

・蜘蛛の絨毯
 通称「蜘蛛屋敷」での密室殺人事件。
 ここまで蜘蛛まみれだとある意味すがすがしい。
 とはいえ、蜘蛛嫌いの人にとっては「うへえ」となる
 んでしょうなあ。
 足がたくさんあるのが嫌な「蜘蛛嫌い派」と、
 足がないのが嫌な「蛇嫌い派」があるそうですが、
 どっちもOKなわっちはどうしたらいいんでしょうな。

 最後の文章は、何気ない会話がどこかで誰かの
 引き金を引いてるかもしれないという警句か?

・座敷童子の棲む部屋
 鄙びた旅館で、座敷童子が出る部屋での殺人。
 個人的に客商売で無愛想はいかんとおもうのですよ。
 それはさておき、いくらベニやんが美形だからって、
 寝顔を肴に酒を呑むってどうなのよ鬼丸さんw
 あとお酒を飲むと2割増しで言動の阿呆さが際立つ
 ベニやんがかわいい。

 ところで今回、旅館の同じ部屋で寝泊まりだったん
 だけれど、鬼丸さんむずむずせんかったんやろか。
 ベニやんに近づくとチリチリするんじゃなかった?

・結界の密室
 陰陽師としてはイマイチな能力をレベルアップさせる
 べく頑張るベニやんに、試練の時!
 元院長を狙う生霊対策にがんがらじめの結界を張る
 ものの、その保護対象が殺されたからさあ大変。
 陰陽師やめないとと、ベニやん凹むわ、鬼丸さんが
 焦るわで、これまでにない展開でしたね。

 敵対するべき存在なのに、そばにいたいという自分の
 思いに苦笑する鬼丸さん。…それモロ惚れてまっせ。

そんなこんなで、凸凹コンビを中心に、鬼丸さんが知恵を
借りにいくスナック「女郎蜘蛛」の妖怪たちや、鬼丸さんに
ホの字の小麦嬢など、主要メンツがほぼかたまり、
次巻からはいよいよ二人が一致団結して対処せざるをえない
大きな事件が起きそうな…予感?

「オニマル 異界犯罪捜査班 結界の密室」
田中啓文、角川ホラー文庫

2014年2月 6日 (木)

「ダチョウは軽車両に該当します」

「午後からはワニ日和」の続編。
タイトルどおりダチョウがのっけから登場。
走る姿とか、ばっさばさ揺らす大きな羽根
とか、ナマで見たくなります。
ほら、やっぱ動物園行きたくなるシリーズだw

で、内容も前作同様、動物園に勤める桃クン
奮闘記にして…やはりハードボイルド。

コトの起こりは先輩が出る市民マラソンの
応援に行った先で、どこからともなく突然
やってきたダチョウがコースを逆走&爆走。
居合わせた同僚の協力もあってなんとか捕獲
には成功したものの、このダチョウがどこから
来たのかはまったく不明。
他の動物園での保護が決まって事件が終わった
と思いきや、桃クンのまわりには不穏な影が…。

今回、動物蘊蓄はやや少なめ。
ミステリアスな鴇センセの過去話があれこれ
出てきて事件もあれこれ発生します。
こころなし、七森さん(ふれあい広場担当)の
思い切りの良さと、服部君(爬虫類担当)の
変態っぷりが増してる気がしましたね。
とくに服部君。GPSを内緒でつけたらさすがに
いかんでしょうにw

事件の起こるスピード・展開ともにかなり早く、
とっくり推理云々はないですが、桃クンはじめ
七森さん、変態服部君との会話など、思わず
ニヤリとしてしまう場面は多かったです。

事件について言及は避けますが、桃クンが最後
犯人へ投げつけた言葉は、いろいろ考えさせ
られるものでした。

どうやら御曹司っぽい服部君やナイスミドルな
園長など、動物園には気になるキャラクターが
多いので、ぜひ第三弾を期待したいところ。

「ダチョウは軽車両に該当します」似鳥鶏、文春文庫

2014年2月 2日 (日)

「午後からはワニ日和」

動物園にしろ水族館にしろ、そこに勤める人の
仕事についてあれこれ知ることができる小説は
好きです。

「午後からはワニ日和」も、そのひとつ。

無線機や工具、鍵束など腰に下げた道具の説明に
はじまり、開園前の動物の健康チェックや
食餌づくり。
一番気を使う「子どもと動物とのふれあい」に、
担当した動物に担当者が似てくる? なんてのも。

動物園の仕事以外にも、ブタやコウテイペンギンの
「見かけによらない」あれこれについても書かれて
いるので、読んだあと久しぶりに動物園に行って
みようかな。そんな気にさせる1冊です。

ただ、物語は動物ほのぼの系かと思いきや、かなり
ハードボイルド。
イリエワニの盗難にはじまる一連の事件の結末は
なんとも苦く悲しいものでした。
小説やドラマで「あいつさえいなければ」ってのが
根っこにある事件は多々あるけれど、この作品も
まさにそう。やりきれない。

個人的には、やたら動物になめられる(物理的に)
主人公の桃クンや、表面上はキリリだけど中身は
すごく乙女な鴇センセ(三十路)がツボでした。

続編は「ダチョウは軽車両に該当します」だそうで。
…ダチョウって乗るの難しくなかったっけ?

「午後からはワニ日和」似鳥鶏、文春文庫